やっとのことで上まで上がり、小一時間ほっこりしながら脚の筋肉疲労を緩和した。
ここまでの「荒行」は、前回、前々回の記事をどうぞ。
奥の院に着いたのは12時台ということで、窓口のお坊様もお食事を取っておられるよう。ということで、1時まで待って、御朱印をもらったり、お願い石に金の梵字を書いてもらったりしていた。
その後、傍らの奥にある「龍神様の祠」に参拝してから、いよいよ下山の時が来た。登りの荒れた道を思い出し、帰りは行きとは違った苦労が容易に予想ができたため全く気が進まなかったが・・・
人はいないし足元は危ういし・・・
登りは午前中だということもあり、健脚を誇るご老人たちと沢山すれ違い話もしたのだが、午後になるとめっきり人の姿が見えなくなっている。
「ご老人は朝に動く」のは世の決まりだが、それにしても、人がいないとここは普通に山の中なので何とも心細い・・・
そして、この自然のままの道を下り始めると、これは難儀するだろうことがわかった。
上る時はただ筋肉的疲労と循環器の心肺機能との闘いのような様相を呈していたのだが、下りは、「捻挫をしないこと」が至上課題となる。
何しろこの靴なのだから・・・
靴の紐をきつく締めなおして、中で足首がぐらつかないようにする。そして文字通り一歩一歩に細心の注意を払い、地面や石を踏みしめるように恐る恐る歩きだしていた。
一瞬の気の緩みが足首の命取りとなりかねない。こんなところで動けなくなったらレスキュー部隊を呼ぶことになってしまう。慎重に一歩、慎重に一歩と、歩を重ねてゆく
ここは深い山の中。足元も怖いが、誰も通らないので怖い。こんなところで通り魔に会ったら完全に終わりだ・・・
まるで魔界への入り口が潜んでいるような不気味な色をした森。この状況下で人間一人跡形もなく消し去ることなど容易いことのように思える。
更に怖いことには、山の上の方は電波の圏外となっていて、電話が繋がりにくかったりするのだ( ノД`)…
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一番怖いことを知ってしまった
このあたりで石に腰かけて休んでいるオジサンに出会う。久しぶりに人を見た安心感でやはり話しかけてしまう。でも、もしもこの人が変質者だったりしたら一貫の終わりだったかもしれないが、結果的にはそうではなかったのは幸いだ。
しかし、この方からオソロシイ事実を聞いてしまう・・・
下から上がってこられたのだが、前回来た時になんと大きなイノシシが目の前を横切っていったのだと!!!!
「あと少しタイミングがずれていたら危なかった・・・」のだそうだ。
ご存じだろうか?
六甲山系から続く兵庫県の山側一帯はイノシシの生息地で、川を下って人の住んでいるところまで普通に下りてくるのだ。阪急岡本の近くの川辺には、春には数頭の瓜坊を従えたごついお母さんイノシシ達が幾世帯も、柔らかい日差しを浴びて気持ちよさそうに集団で昼寝をするのがこのあたりの風物詩なのである。
昨年、御影近くの神戸大学の外国人学生寮を冬の夕暮れに尋ねた時も、中庭に3頭ほど大きな影が蠢いていたのを目撃した。神戸の山手は裕福で瀟洒なお宅が多いが、イノシシとの共存を覚悟で住まねばならないらしい。
とうことで、今はまさに生息地の真っただ中にいる自分の状況を知ってしまったのであった。
これは何とか身を守らねば・・・
身の毛もよだつとはこのことだ。今のままの丸腰ではイノシシの餌食になってしまうことは間違いない。身を守るための武器を探さねばと思いながら歩き始めたところ、横の草むらの中に良いものが落ちていた!
これは、良いものを見つけた‼
足元が最悪なところの杖にもなるし、イノシシが出てきたら、「面(め~ん)!」と眉間に活を入れてやることができる。
ここからは専ら「杖」としてこの枝に命を預けることとなった。
びくびくしながら一歩一歩気を付けてて歩くがなかなか進まない。登りの時ような筋肉疲労はないが、精神が削られるとはこのことだ。既に1時間くらいが経過していた。
そして、行きに「おねえちゃん」と呼ばれた紅葉が見えてくる。ここまでくればそろそろ半分くらいの距離なのだが・・・
下りの難所が始まる
半分より下の難所が始まる・・・斜めになっている地面の石が緩んでいるのに気づかず、そこに足を載せてしまい尻もちついてしまった。( ノД`)
苦労して奥の院まで上っても見晴らしの良いところは一つもなかったが。少し街の風景が垣間見えたのでパチリ。
ワーオ‼石ころゴロゴロ♪ 右はイノシシが破壊した木だろうか・・・
イノシシの気配に気を取られすぎて、ここで、足首を2回ぐねった。杖があったので大事には至らなかったが気をつけねば…
叢が、ガサガサっというと、びくっとする。大抵は鳥だったが、本当に心臓に悪い。
お地蔵様、どうか無事に下山できるようお守りください( ノД`)…
ここで、気づいた!「熊鈴」を鳴らすほうがきっといい。鍵を無くしやすいためいつも持ち歩いている鈴を取り出し、カランカラン言わせながら歩き始める。
怪我なしで、ここを乗り切れるだろうかと、杖を持つ手に力がこもる。滑って尻もち2回め。足首も派手にグネッとやってしまい痛みが残る。
細い道。まるで「獣道」これはイノシシがどこから出てきても不思議ではないよね…
しばらく、黙々と歩いていると、後ろから大きな足音が聞こえ、びくっとしたら、下り途中ですれ違った下から登ってきた高校生体育会系の男子が、飛ぶように駆け下りてきたのに抜かれた。(イノシシでなくてよかった…)
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そして下界に戻る
あ~、やっと文明の世界に戻ってきた・・・( ノД`)…
「最後までこんな道、危ないだろ‼」と、わけもなく腹をたててしまった
山道が終わり、一気に気が緩んで横のコンクリートにへなへなと腰を下ろす。行きに靴の写真を撮ったところだ。
「これなしでは大きな被害が出ていたであろう」、という恩人のである杖をコンクリートの上に置いて愛おしく眺めた。ありがとう、杖・・・
次に登る人のために、杖を看板の下に立てかける。
「道中の伴侶」にはここで別れを告げる。
寺まではもう少し下るのだが、ここで道がわからなくなり、本物の熊鈴を鳴らして下りてきたオジサンに中山寺までの戻り方を訪ねる。
あぁ、出しなに見た心安らぐ風景にぐっときた。この美しい風景に騙されてえらい荒行をすることになってしまった
「荒行」を終え中山寺で運試し
青龍搭の下まで戻る。西からの日の光を浴びて青が一層美しく照り映える。この時午後3時46分。出発したのは、午前10時40分。
下から見ても綺麗だ。空の青より一層深い青
行きに話をした搭の横の受付のお坊さんに、「往復で5時間ほどで行って帰ってきました!」と報告して、恒例のお御籤を引いた。結果は次回に・・・
この時、宝塚の音楽スタジオで授業中の娘から連絡が入り、「もう少しかかりそう」とのことだ。阪急中山観音駅まで足を引き摺るようにして歩き、電車で居眠りしながら先に京都への帰路に着いた。
結局、娘は5時までスタジオにいて、先輩たちにJRの中山駅まで一緒に帰ってもらい、京都の最寄りの駅までへとへとになって戻ってきたのを車で迎えに行った。
私の方は、
帰宅後に体重を計ると2.3kgも減っていた‼
そして、これ以降は現在まで、どんな階段を上るのも楽勝に感じるくらいに足が軽くなっており身体がリセットされたような気がしている。
「荒行」・・・たまにやってみるのもよいものだ
娘の荒行はこちら☟
(個人的な5時間だけの体験を描いた長い手記にお付き合いありがとうございました)
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