11月1週めの学校の秋休み、病を抱える娘は5日連続外出という強硬スケジュールを組み、体力と気力と脳脊髄液減少症を限界まで追い込む荒行を敢行することとなった。
その最終日から2日目、娘を宝塚近くの中山観音駅でタクシーに乗せるまで同伴することになった私は、駅前に位置する有名なお寺「中山寺」にふらりと立ち寄り、すぐに京都に戻るはずであったのだが・・・
この「枝」の意味するものとは?
長さ約1メートルのこの杖のような木の枝を一目見て、私がこの日に体験した想像を絶する時間の正体が思い浮かぶ人はまずいないと思う。
これは山に落ちていたただの折れた枝であるが、私にとっては命綱としての「金の杖」のような役割を果たした物なのであった。
この枝を汗ばむ手で握りしめ、恐怖を感じながら歩いたあの時の掌の感触が今も蘇る…
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中山寺観光
11月初旬という事で、七五三の家族の姿がちらほらと散見されるこのお寺は、子供関連の安寧を願うお寺として有名であるらしい。
「北摂の地に紫雲たなびく」という中山寺は、聖徳太子の創建と伝えられる我が国最初の観音霊場ということで、豊臣秀吉もここに祈願して秀頼を授かったとされている。後に明治天皇の勅願所ともなり、「安産の寺」として全国からの参拝者を集めている。
神戸にいる時に一度訪れたいと思っていたがその機会を得ず、今回娘も付き添いの駅の近くに偶然あったことから足を踏み入れた。
駅から2~3分で到着
両脇にはダリヤの綺麗な植え込みがある道を進む
一段高いところにあったベンチで休憩し、サンドイッチとミルクティーを味わう。朝ごはんを食べてこなかったので…
5重の搭を見て帰ろうとまた一段上に上がると美しい紅葉が迎えてくれた
当の近くに来て見上げる。400年ぶりに再建された、まだ新しい「青龍搭」。多宝塔とともに美しい姿がそろい踏みだ。多宝塔は写真を撮るのを忘れてしまった。
はっとするほど鮮やかな群青色が美しい・・・
傍らには弘法大師様の像が佇んでおられた
ここで帰ろうと思って、受付のお坊さんと話をしていたら、「奥の院」というところがあり、沢山の方が訪れているらしい。
なんでも、小石が揃えてあって、好きな色形を選び、清水で清め、梵字をその場で書いてもらうとのこと。願いごとがよく叶うらしい。
「私、こんな格好でも行けますか?」と、聞いてみたら、窓越しに上から下まで眺められ、「う~ん、どうでしょうかねぇ…靴が厳しいかもしれませんが、70代、80代の方もいかれているので大丈夫だと思いますよ。1時間くらいの登りですから」とのこと。
普段は駅でも階段は避けてエスカレーターに乗ってしまう人間なのだが、この時は無性にその「願掛けの小石」が欲しくなった。そして、娘がこの数日間限界までがんばって少しでも普通の人のスケジュールに近いことをこなそうとしている姿を見ていたので、なんだか自分を体力の限界まで追い込んでみたい衝動に駆られたのだ。
そうすることで、今の状態で娘が生きているそのしんどさを追体験できるかもしれないとも考えた。
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意を決して荒行へ向かう
「奥の院」はここから2km。でも山なので勿論坂道を上るばかり。この後登山道にたどり着くまでにしばし道に迷い、歩いていたお婆さんに助けてもらう。
墓地の横を通って、街の景色を遠方に眺めながら少し歩いてゆくと
突然雰囲気が変わった。な~んだ、こんな感じの森林浴をしてせせらぎの音を聞きながらだったら2kmなんてあっという間のことだろう、と思った
そうしたら、左の狭い道を進むような指示がある。ここは「信仰の道」。まさにこれから荒行が始まろうとしている。前方には犬を連れてあるく男性が見える。平面に見えるが、ここは山であって結構な登りなのだ!
引き返すべきか迷ったが・・・
10分ほど坂を上り息切れがした。はっきり言うと、「もう疲れた」。休憩のため腰かけた向かいにある石の標識には「3丁」と刻んである。てっきり10丁でゴールだと思って上から降りてきた60代くらいの女性に、「10丁まではきつかったですか?」と問うたら、なんと18丁まであるということだ。
どうしよう、引き返すなら今だ。これからこの6倍の道を歩くことになるのだ。私は慢性病があるため、少しの負荷で心臓が爆発しそうになり息が荒くなる。そしてすでにもうしんどすぎるし一人で歩くのは退屈すぎるので、やめようかどうか座り込んでしばらく迷っていた。
そもそも、この靴ではキツイ・・・
かといっても、上からどんどんご老人の年齢の方々がおりてこられる。格好良いスポーティーなウェアと山歩き用の靴、そして、手にはストックのようなものを持たれている方もいる。
一々お歳を伺っていたら、60~70代の方が多く、最高齢は79歳だった。それなら50代の私なら少々ハンデはあっても登れないはずはないだろうと、しばしの休憩で息も整えもう少し上を目指してみることにした。
ここからは道らしい道はなし
すると、石段が無くなってこんな荒れた道になってきた…
細い登り道。心細いところに友人から電話がかかってきたので、ぜーぜー言いながら15分ほど話していたらちょっとしんどさが紛れたが、「信仰の道」で電話しながら荒行とうのは、罰当たりなことをした気もしている
ここは難所・・・
ちびっこたちが先生に引率されておりてきた。「がんばれー」「がんばれー」と声掛けをして貰った。
道のわきには石を積んだお地蔵さん?
本物のお地蔵さんもおられて、少しほっとする。
うわ~、またきついの登りが。それにこんな石だらけのところ何処を歩いたのか、今思い返しても意識が朦朧とした状態だったためまったく覚えていない・・・入り口で見たワンコに追いつきそう。
わんちゃん、気づいてくれたみたい
まだまだ続く。追いつけそうで追いつけない
ずっとこんな岩の凸凹道が続く。小学生の頃は、山にいってこういう険しいところで遊ぶのが大好きなアクティブな子供だったなぁ・・・離されてワンちゃん、見えなくなった
あれ、遥か上を見るとおじさんが立ち止まっている。あそこまで行けば何かあるのかな?
やっと半分の地点に到達…
そこまで到達すると、休憩所の「夫婦岩」だと分かった。ここまでで既に1時間以上が過ぎ去っていた。途中で腰を下ろして休むこと4回。軽装のお年寄りにどんどん抜かれていったのだった。
この日は普通に街に行く格好に5センチヒールの「旅日和」という旅行には最適のエアの入った靴。でもそれはあくまでも平地用で、ここでは不似合いな代物であった。そして、肩には3キロはある大きなバッグを抱えててもいたから余計にしんどい。
夫婦岩の裏に回ると、おじさんとワンちゃんを発見。ここでお話をしばらくして休む。
このおじさんも、犬の散歩に来たところひょっこり山道を入ってしまいエラい目にあったということ。御年は60代後半。ワンちゃんは、「お月」という名前で、齢12歳のご高齢。
「お月、大人しいね、可愛いね!」とツーショットをお願いする。お月は、すごく嫌そうにして最後までこちらを向いてくれなかった。
「おじさん、お月って人見知りしないよい子ですね!」というと、おじさん、「いや~、よく噛むんだわ。130回ほど噛まれたんだよ」「え…、噛むって誰にでも?」
「そうそう、ハハハ!」・・・ それなら早く言ってよ~(*_*;
おじさんとお月は、この五合目でギブアップするということ。
ここで別れを告げ夫婦岩を後にする。
私のこの秋の「荒行」はまだまだ続く。(ブログに纏める作業も荒行と化す)
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