娘はH30年2月27日の学校事故の日を境に、髄液漏れの典型的症状が多々発生した。初期の保存治療が功を奏さないため、明舞中央病院脳神経外科において6月、10月、12月の三回に渡ってEBP(ブラッドパッチ)をしてもらった。
腰を強打した後、娘が脊椎の下部、ほぼ尾骶骨に近いのあたりを指さして、「なんかこの辺りにじゅるじゅるしたものが流れている感じがする」と、しきりに言っていたため、N医師に頼んで、一回目のブラッドパッチは、普通はやらない尾骶骨より下のあたりから血液をいれてもらった。(ここだけは痛かったらしい)
また、3回目には、もうカバーしていない所は頸椎上部しかないため、これもめったに行わない1、第2頸椎のあたりまで、カテーテルを通してのパッチを、外部から専門医に来て頂き、特別に娘と、もうひとり、こちらもブラッドパッチを何回かした後も回復が思わしくない高校生の男の子の2人だけのために先生2人がかりでして頂いた。
- 一回目( 6月)腰椎下部、胸椎、頸椎下部の3箇所
- 二回目(10月)腰椎、胸椎の2箇所
- 三回目(12月)腰椎、胸椎、頸椎上部の3箇所
普通、これだけすると何らかの変化は見られても良いはずだ。起立性頭痛に関しては、かなりましになり、娘の体感では、ブラッドパッチ前を10の痛みとしたら現在は3くらいだそうである。しかし、高次脳機能障害や睡眠障害(昏睡したような過眠)は全く改善していない。N先生は、「半年くらい様子見て」と仰るが、「眠り姫」状態の娘を傍で見ているのは拷問のような辛さがあり、何か動かない事にはこちらの精神がおかしくなりそうで居ても立ってもいられない。N医師の同意を頂き、神戸市内の病院で、久しぶりに幾つかの検査をしたりしていた。
その一環として、以前から「もしかしたら・・・」と疑いを持っていた、”血液凝固13因子”の活性率の問題がある。先月、タイムリーに、ネット上で13因子に関する随分昔の治験についての医学論文を拾った。どこの病院?と思ったら、なんと行ける距離の病院ではないか!
かかりつけの明舞病院でもこの検査は可能であるが、ブラッドパッチ自費治療後の3か月の自費期間が、診察に行ったらまたそこから三ヵ月カウントというふうに延々と終わらないため、N医師から紹介状をもらい、正に、この論文の研究班の医師の診察を受けることになった。
そして早速13因子の活性率を調べる血液検査をしてもらったのである。13因子は止血や創傷治癒に関わる因子で、血液凝固の最終段階で働きその他の凝固因子を網目状につなぎあわせることで、血液凝固を安定したものにする働きがあるため、これが不足すると傷がふさがらない。
脳脊髄液減少症とは脊髄の硬膜の傷(破れ)から髄液が漏れ出る現象である。よって、もしもこの因子の活性率が低ければ、ブラッドパッチをしても血液凝固作用が十分に働かず、ブラッドパッチそのものの効果が出にくいということは十分に考えられるのである。先天的にこの因子の少ない人は、鼻血が出ても止まらなかったり、怪我をしてもその傷が塞がりにくかったりするため、特に外科手術後は傷がふさがらず体液で穿孔が形成されたりして、重篤な症状をもたらす危険もあるのだ。治療としては、13因子の血液製剤を注入するということである。
これを娘の症状に応用できないだろうか?
2月末の娘の血液検査の結果は、翌々日に、担当のU医師から電話でもたらされた。
「お母さん、やはり〇〇〇ちゃんの13因子、低かったです。基準値70~140のところ、59しかありません!」
1つ、現在の混沌とした状態についての何かの糸口がつかめたような気がした。
*この13因子活性率の低下から考えられる可能性が2つある*
- もともと活性率が低く、ブラッドパッチをしても血液がしっかり固まらないため、現在も髄液漏れの部分を塞ぐことができていない状態である。
- もともとの活性率は異常はないが、何らかの原因で髄液漏れが塞がらず、どんどん漏れ出ているため、それを止めるために13因子が大量に消費され続けている結果、血液中の13因子の一時的低下状態が継続している状態となっている。
- 全く別の病気が原因
U医師の見解は、「おそらく②のほうではないだろうか?」ということであった。
明舞病院のN医師にU医師の方から報告を入れると、「こんなケースもあるのか・・・」と興味を持たれていたということだ。
現在この治療ができる病院は全国でも少ないか皆無で、更に、血液製剤であるため子供への投与には非常に慎重にならなくてはいけないらしい。そのため、4月に再度血液検査をしてその数値の推移と体調の変化を照らし合わせて判断してもらう予定だ。
-ほんのわずかでも希望がある限り、私は倒れ込まずに動き続けられる-