「脳脊髄液減少症」の悲しみ①~分断された友情~ の続きです。
訴訟の難しさ
実際の患者のうちの10人に1~2人しか映らないという髄液漏れの画像がなければ、他にいくら検査結果や医師の所見がこの病気を示すものであっても保険診療の対象になりません。
そこからは、ほぼ全額自費の治療となり、被害者側の負担は膨らむばかりです。交通事故などは、当然相手方の保険会社との交渉となりますが、そう簡単なものではありません。最終的に訴訟をせざるを得なくなる場合もあります。
学校事故の場合は、100%訴訟をしないとお金の動きはないようです。公金なので、当たり前のことですが・・・
しかし、ここで困るのが、画像がないとか、或いは、少ししてから症状が現れ、発症と事故との因果関係の立証が難しい場合などは、弁護士のほうでも尻込みをしてなかなか、快く引き受けてくれる人が見つからないのです。大変難しい案件なのです。
実際に聞いた例では、一旦引き受けて着手金まで払ったのに、しばらくしてから
「やっぱり手を引かしてもらいます。勝ち目はないですから、奥さんも、こんなこと早く忘れてパートでも行って収入を得た方がいいですよ」
などと言われた患者さんもいるのです。ひどい話です。
医師と裁判官も・・・
医師の中にも、最近まで、「脳脊髄液減少症という病気は存在しない」というような考えを持つ方が多く、今でも、大学病院などではその流れを組む否定派が多数の所もあります。
娘の脳脊髄液減少症の主治医の所には、他所(有名な国・公立病院)で、脳脊髄液減少症のきちんとした治療をしてもらえず、親の判断で、藁をもすがる思いで流れて来られた患者さんが沢山おり、多くが脳脊髄液減少症の髄液漏れを止めるためのブラッドパッチをして回復されているのです。
訴訟になると、保険会社側は、そのような流れを組む否定派の(悪徳)医師からの意見を盾に、「脳脊髄液減少症」であることを認めず、発症した症状と事故との因果関係はないということを強引に立証しようとします。
ここで、判決の分かれ目となるのが裁判官なのですが、法律関係の方から聞いた話では、未だ、この病気に関しては保守的な意見に与する人が多いそうです。
つまり、「画像診断がないことなどから、この病気とは認められない」とか、「事故との因果関係が不十分」といった結果に終わるというのです。
訴訟には費用がつきものですが、勝ち目があるかないかわからない、賭けのような訴訟に大金をつぎ込む事はなかなかできるものではありません。
なので、担当医師の話によれば、学校事故での脳脊髄液減少症は、画像がない場合ほぼ全て被害者が泣き寝入りをして、私達のように自費治療費を自ら負担されているということです。
ただでさえ、生きていくのが辛い身体にされた上に、被害者として当然の補償を受けようと思っても大きな壁がいくつも立ちはだかっている状態なのです。
このような厄介な病気ですが、2016年の一部保険適用から、徐々に認知度が高まり、あと10年もすれば状況がかなり変わっているかもしれません。
このブログにより、脳脊髄液減少症患者となった娘の体験を多くの人に知ってもらい、今後、行政が成熟した判断をできるような、肥えた民意の土壌を作るための「肥し」にでもなればいいと思っております。