昨日はバレンタインだった。
「2月14日はバレンタインデーで、日本では女の子が男の子にチョコを渡す日である」という認識は、数日前から頭のなかにボンヤリとあったのだが、それを行動に移す必要があるかどうか検討するというところまで、全く考えが及ばなかった。
事故以来、子供を壊されたまま目の前に放置され、季節の行事も祝う気力もなく素通りしていった。状況は、かなり好転しているとはいえ、今の心境では今年のバレンタインデーも例外ではなかった。
頭が働いていない。10日ほど前の福山での「最後の賭け」に破れてしまったことで、正直言ってものすごく落ち込んでいる。「少しずつよくなるかもしれないよ」と言ってい頂けるけれど、唯一の可能性のある、ある全日制高校への進学はもう風前の灯となっている。今の時点で起きられないことには受験すらできない。
そして、周りでは受験を終えて進学先が決まる子供が、続々と出ていると言う状況となっている。「他の子と同じレールの上を共に進んでいくことはできない」とは、もうとうにわかっているのだが、今現在、そのレールが分かれ、娘と違う方のレールの方へ、皆が次々と行ってしまうという時期なのだ。
しんどい受験勉強を終えて、希望の学校へ進む子供たちが眩しく見える。
娘は平常心でいるようだが、もうずいぶん前に「悟り」を持っているのだろう。
この時期、娘の事故以前の自分なら、お世話になっている方々に義理チョコの一つでも送る準備を進めていたはずなのだが、昨年のバレンタインの記憶、どれどころか、冬の記憶が全くない。脳細胞が生命維持をすること以外には全く働いていない状態だったのだろう。
元気なときは、おじいちゃん二人、お父さん、お兄ちゃん、バイオリンの先生のところの「おっちゃん」に、私と一緒に選んだチョコにメッセージをつけて毎年手渡ししていた娘である。恋をしたことがないため、本命チョコはまだ必要ではなかったが…
そういえば、娘の頭もやはりおかしくなっているのだろう。昨日は、娘にとって大恩人である特別支援学級の男性の若い先生に来て頂いていたというのに、チョコを用意するなどという意識が私と同様完全に抜け落ちていなかったようだ。
しかし、まさにその日に、私達の不意をつくような素敵な出来事が舞い込んだのだ。
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思いがけない訪問者
授業が、終わりに差し掛かろうとしていた時、玄関のチャイムが鳴った。宅配だと思ってモニターを除いたら、女の子が一人映っていた。
娘のお友達だ。
「何の用かな?学校のプリント類を持ってきてくれたのかしら?」
と思ってドアを開けた。制服を着ておらず、学校帰りではなさそうだ。
「ごめんね、今、訪問の先生の授業が終わるところだから…」
「急に来てタイミングが悪いこと充分わかっているのですが、バレンタインのマフィンを作ったのでくららちゃんに渡そうと思って…」
と、しなくてもよいのに遠慮深げに恐縮している。
まだ公立高校の受験は始まっておらず、今は、受験追い込みの忙しい時期。「時間は大丈夫?」と聞いて、授業が終わるまで中で待っててもらった。
それから、娘にマフィンを手渡しをしてくれて、しばらくお喋りをしながら、塾の時間までいてくれた。
クラスは違うが、娘が入学したてのころに、声をかけてきてくれた子だ。
「藤田くららさんですね。あなたのこと尊敬してます!」
と、いきなりストレートに来たそうで、帰ってから、私に嬉しそうに話していくれた。
「今までは、友達作るの大変だったけど、今は、向こうから声かけてきてくれるから楽でいいわ♪」などと、言っていたのを思い出す。
でも、以降、以前は空気を読みすぎていたのが、すごく積極的になり、たくさんの新しい友達ができたりして、学校生活をエンジョイしていた。
蓋を開けてみれば、その子は大変優秀な女の子とわかり、それでも、娘の英語のことを学校のなかで、先生を含めても、一番理解してくれていた人物だったと思う。
その後、娘が不幸に見舞われ、学校から疎外されていた長い期間、彼女は、娘のことが気になっていたが、他の生徒同様忙しさに紛れ、来る機会がなかったと言う。
そして、最近のことであるが、娘にメールで、
「もっと早くお見舞いにいくべきだったのに、ごめん…」
このような感じの言葉を送ってくれたのだそうだ。(見ていないので正確ではないと思いますが)
彼女が謝る事ではないのに…
クラスも違い、付き合いもそこまで深くなかったと思う。
それに、学校の方で、事故の一部始終を意図的に隠蔽していたのだから、娘は、意味不明の長期欠席の不登校児として、近づきがたい何か訳ありの生徒、みたいに思われていたと思う。今もそうであろうが…
そんな中、孤独の淵からさらに深刻な奈落へと落ちていた娘には、「友達」が一番必要な事を悟った感受性の鋭い彼女は、2019年がもう終わろうとしていた時期のある日、娘のクラスの女の子数人のお見舞いに加わって、娘に会いにきてくれた。
(皆さん、その節はどうもありがとうございました!)
そうして昨日、公立高校受験に向けて心理的にとても大変な時期に、術後でベッドから離れられない娘に思いを馳せ、忙しい時間の合間を縫って、まるで美しく清らかな羽を持つ天使のように、娘の前に舞い降りてきた。
「あまりにも気の毒な友達に対して、人として何かをしてあげたい…」という、友情とヒューマニズムに溢れた気持ちが、その眼差しに溢れている。
事故に遭って以来、関係者らの無関心や酷薄さもつぶさに見てきた私達には、中学生の彼女のそのまっすぐな思いは崇高ですらあり、本物の天使に見えたのだ。
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