前記事では、高校1年のSさんの治療経過を見て、「被曝を伴う髄液漏れの諸検査をする以外には現在の娘の頭打ちの体調の突破口を開けない」と悟ったことを書きました。
その検査なのですが、昨年5月にMRIやRI脳槽シンチグラフィーまでしても漏れが映らなかった兵庫県のM病院、そして、先々月MRIを医師3人がかりで見ても漏れはみつからなかった兵庫県のK病院といった経過があったことから、今回は、広島県のある病院に白羽の矢を立てました。
患者会の噂によると、この病院のMRIが性能が良いとのことで、他院で髄液漏れ画像が撮れなかった患者さんが、そちらの病院に行くと映ったとか映らないとか・・・あと、そこではブラッドパッチは保険診療で行うということで、過去3回、自腹を切った私としては、とても魅力のある病院に思えました。
しかし、距離が遠いのがネックとなり二の足を踏んでいたのです。
しかし再度、被曝を伴う検査をするのなら、一番映る可能性のある高性能と言う噂のMRIを所持するこの病院に一か八か命運を賭けてみようと思ったのです。
一生に何度もするような検査ではありませんので、兵庫県の今までの病院で行って、また映らなかったときに、「あぁ、こんなことなら、映ると噂のあるあちらで撮るべきだった…」と、後悔したくなかったからです。
普段はだらだらしていますが、こうと決めれば行動は早い私です。
新幹線の指定席の切符を2枚前日に買って準備は万端。あとは、10時半MRI検査に間に合うように、早朝に起こすという難題が残るだけです。
10月7日は、幸いにも穏やかな朝でした。天気娘を起きられなくする低気圧の襲来も無く、7時半に何とか起こして、ふらふらしている娘を新神戸までタクシーで膝枕で寝かせて運びました。ここまで来れればもう心配はいりません。
目指すは、福山医療センター脳神経外科です‼
旅行や電車や移動が大好きな私は、狭い家の中で眠ってばかりの娘と対峙する動きのない日常を抜け出せるこの機会に、少しわくわく気味です。
主役の娘は早朝から起こされて体調は最悪なのですが・・・
なので、ここからは旅行日記調でいきます。(画像は、本人の希望により、色鉛筆タッチにいたしました)
新神戸でのホームです。朝の通勤時なので色んな新幹線がドンドン入ってきます。
若干安い「さくら」はもう一杯で、「のぞみ」しか空いていませんでした。所要時間2分違いで料金は210円の差なら、やはり、さくらを選びますよね。
ホームで、色んな新幹線を見て興奮している私を尻目に、娘は、即座に待合室に入って線路とホームに背を向けて腰かけて座わり、ずっと目を閉じていました。
全身から滲み出る気分悪いオーラに、ビジネスマンたちが、「この子、一体どうしちゃったのかな?」とチラ見していました。
私達の乗る「のぞみ」が滑るようにホームに入ってきます。娘はやっとだるそうに待合室から出てきました。左上に、指が入ってしまい、失敗写真です。
外の景色に興味を示すどころではないようで、座るなり窓も閉めて眠ってしまいました。外も見えず、話もできないのでちょっと退屈でしたが、50分弱の時間で着いてしまいます。新神戸 ⇒ 岡山 ⇒ 福山 京都へ帰るより近いですね。
福山に到着して、タクシーに10分ほど乗りました。駅を離れると、かつての賑わいからやや寂れかけたような香りのする街中を抜けると、唐突に、大きな建物が現れました。「え、こんな辺鄙そうなところにこんな大きな国立病院が?」
実際の色は、寂しいくらいに大人しい普通の病院の建物です。こんな品のないお色ではありません。
受付を済ませ、待合所で、膝枕で寝させていると、「検査時間まで、あちらで休んでください」という親切な申し出を受け、放射線科の度真ん前でストレッチャーの簡易ベッドで1時間ほど寝させてもらえました。
このことからも、この病院には遠方から脳脊髄液減少症がよく来られ、病院スタッフもその対応も心得てられることが窺える気がしました。
MRI.(脳、脊髄)、診察と終わり、血液検査を受けるための待合所です。
椅子の明るいカラーが印象に残りました。朝の診察でも、この人の少なさ・・・
診察も、予約したとは言え、驚くことにほぼ待ち時間なしだったのです。兵庫県のかかりつけの病院がいずれも、2時間待ちくらい(以前は4時間待ちとかありました)であることを考えると、人口密度の差かなにか知りませんが、患者側の負担はかなり違いますね。
外出するときは朝食を食べられない娘。昼を回って体調もましになってきたため。やっとこの日初めての食事をすることにします。ネットに載っていた一階の喫茶店に入ります。
ちょっとおしゃれな病院の食堂っぽくない空間がそこにはありました。奥には、焼き立てパンコーナーもありました。娘は定食を注文、ちょっと高めだったので私はパンを買って節約。どちらも、とっても美味しかったです‼
お腹が落ち着いたところで、エネルギーが切れないうちに帰途につきます。
病院から乗ったタクシーの運転手さんが、福山のことををこき下ろしてられました。行きのタクシーの中から見た町の寂しげな印象は正しかったようです。「商店街が潰れて、若者も流出して、車無くては生活できない田舎町になってしまった!」そうなのです。地元愛が強い方なので、この町が寂れてゆくのが腹立たしいのでしょう。
福山駅のホームから、お城が見えました。福山城ですね。駅からこんなに近いお城も珍しい。一人だと、ぶらりと立ち寄りたいところですが、それどころではない娘でした。
帰り が何時になるかわからないので、駅で切符を買いましたら、こんな昼の時間でも「さくら」は空いておらず、またまた「のぞみ」にお世話になる事に。旅愁に浸れるようなローカル感の溢れた味わいのある駅でした。
「のぞみ」の車窓からの風景。「あんた、どうせ寝るんやろ…」と、娘を押しのけ窓際を占領した私。岡山県の田舎の風景が延々と続きます。目に爽やかに映る美しい緑のグラデーションに、「あぁ、なんと爽やかな風景。まさに旅をしているんだ!」とテンションが上がります。この時の私の心境は、本当に久々に「感無量」といったものがありました。
横を見ると、娘はもう既に、うつらうつらしています。今日の診察室での先生とのお話の場面を夢の中でを反芻しているのかもしれません。 何しろ「凄いこと」が起こったのですから…
(続)