前回の続きです。
高1の娘さんが脳脊髄液減少症の患者であるそのご家族のお母さまは、東北地方で音楽講師をされているとても素敵なSさんという方でした。
ブログを通じてご縁をいただき、こちらが一方的に助けて頂くばかりという患者様のお母様が何人かおられるのですが、そのうちのお1人なのです。
ブログを拝見すると、その中に音楽家の方が皆所持しておられる「ドレスを着て美しいポーズを取ったキメ写真」がありました。更にプロフィールには煌びやかこの上ない経歴の数々…、「これは本格的に音楽をされている方なのだ…」とわかり、どうお付き合いしようかと緊張が走ったものです。
音楽家との付き合いは、子供の習い事関係で沢山ありましたが、常に「先生(師匠)」と「生徒(弟子)の親」という関係性が先に来て、失礼が無いように言葉や礼儀に気を付けて、と言う形で(礼儀外してしまったことも多々ありましたが)、対等な身分で気軽にお話できると言ったことはなかなか難しいことです。
それは、私が個人的に「音楽の才能」に対して異様なほど尊敬と畏怖の入り混じったか感情を持っているからかもしれません。
それはともかくとしまして、
匿名と言う事でSさんの美しき「キメ画像」の代わりに可愛がってられる美猫ちゃん達に登場してもらいます。
子供が難病の患者となってしまった不運を共有する親同士という立場以外に、Sさんは平野レミ級に明るい方なので、私も恐れることなく、情報や近況をやりとりさせて頂くことになりました。現在、視野狭窄に陥っている私に実にタイムリーな情報を届けて頂いております。
特筆すべきことは、Sさんのお嬢さんの症状が娘にとても似ており、中2でブラッドパッチをされる以前は「眠り姫」状態だったことで、いろいろアドバイスや励ましを頂いておりました。
ここでSさんのお嬢さんの脳脊髄液減少症の経過を紹介します。患者さんのご参考になると思うので詳しめに書きます。
*幼少から風邪をひくたびに頭痛を起こす、「頭痛持ち」ですが、活発で、幼少から様々なダンス、器械体操、陸上等のスポーツを楽しむ
*小6、2月に過呼吸を起こすが原因不明
*中1春 入学後に強烈な頭痛、眩暈、吐き気に襲われ、ドクターショッピングを続けた挙句に「起立性調節障害」と診断される。薬は効かず寝たきりに
*中1秋 同じ学校で脳脊髄液減少症の患者がいたことから、検査を受けると髄液は駄々洩れ状態(脊髄からの漏れがクリスマスツリー状の画像)RI残存率は一桁8%(重症)安静治療を何度か繰り返し、その都度治るが再発を繰り返す
*中2、9月 一回目のブラッドパッチ(腰椎)著効があり、登校できるようになり修学旅行も参加する。その後、軽い体調の波はあったが日常生活は普通に送れる
*中3、5月 激しい倦怠感のため入院。RIの残存率は31%(正常値下限)だったため、積極的治療に至らず自宅安静の後回復。その後度々小さな体調不良に
*高1、9月(現在)頭痛、倦怠感がひどく、RI脳槽シンチグラフィーの検査でRI残存率が23%となり、基準の30%を下回ったため、背中(胸椎)に2回目のブラッドパッチに踏み切る
(Sさん、中学2年時ブラッドパッチを腰椎にしたときの画像です。下段画像のの腰椎の濃くなっている部分をブラッドパッチでカバーして漏れを塞ぎました)
Sさんのお嬢さんは、中学に入ったばかりの頃に発症してからこのような経過を辿られています。最後の高1の9月までは、頭痛や過眠、倦怠感が出ていておかしいとは思っておられましたが、安静状態を保ち水分を多く摂る保存治療を重ねて経過観察を続けて来られました。
その間、放射性物質を脊髄に注入するRI脳槽シンチグラフィーを4回されました。
医師による見解の差によるものと思いますが、これは多い方だと思います…
*4回のRIの結果。数値が30%以下が髄液漏れの可能性が高くなります。
- 1回目 (中1) 15%
- 2回目 失敗.
- 3回目 (中2) 8% ☛ 一回目のブラッドパッチをする
- 4回目 (中3) 31%
この経過を見てみますと、中1で発症して、中2の秋の3回目検査までは、数値が減っており、悪化の一途を辿っています。8%というのはかなり重篤な数値です。このころは寝たきりで、こちらの娘に近い状態だったと察せられます。
そして、中2の秋にブラッドパッチをすることにより、漏れは改善し、復学、修学旅行にも行けました。一旦は31%まで回復します。
しかしまだ症状が残り、生活に支障が出るため、今回の検査に踏み切られたのです。
2019年9月に再検査をされました。
すると、明らかに漏れているだろうという数値(RI残存率が23%)が出ました‼
前回のような髄液が漏れている画像ははっきりとは捉えられませんでしたが、腰のあたりが少しぼんやりしているようにも見える画像だったそうです。
検査前にはお母さまと2人で、低い数値が出て漏れが証明されることを祈り、念じてもいたのですが、祈りと念が通じて良かったです!そうでないと、本当に治療のしようがなくなってしまうのですから。
これにより漏れは確実に再発していることがわかり、すぐにブラッドパッチで髄液の漏れを止めることになりました。
ブラッドパッチの術中、自己血液を硬膜外に注入している時は、足と指先が燃えるように熱くなるという反応が出たそうです。
そして、結果は…
あれほどの過眠は、ブラッドパッチ手術翌日から消失、頭痛も消えました‼
以前、学校がない時は自宅で泥のように寝て居たのが、ブラッドパッチ直後から8時間睡眠に戻ったということです‼
それから2週間後に復学されました。
退院後に始められた、テニスのジョコビッチで有名な「グルテンフリー」の食事療法も功を奏して、お腹の調子も良く、お肌もつるつる、元気に学校に通われているということです。
このSさんのお嬢さんの、以前からの体調、髄液漏れの検査結果、そしてブラッドパッチ後のスッキリした回復具合を見て、私は確信しました。
「やはり、娘の昏睡状の過眠は髄液漏れからきているのに違いない」と。
そして、決めました。
「前回映らなかった漏れが、再検査で写る可能性はほぼないと思うが、RI残存率を知るだけでも、娘の現在の不調に髄液漏れが関係している確信が持てる」と。
そして、あれほど検査被曝を忌避しようと思っていた私の心に覚悟が生まれました。
これ以上他の方法を模索しても娘の苦しみを長引かすだけだ。髄液漏れ検査を申し込もう、背に腹は代えられない…
*Sさん、お嬢様の貴重な体験の資料を提供して頂きありがとうございました。このページを見て、脳脊髄液減少症と気づかないまま苦しんでおられるお子様とご家庭の気づきとなることをSさん共々願っております。